№13「BIM導入と技術員不足を考える」
2025.05.14
新型コロナが発生してから2年が過ぎて、止まっていた流れが少しずつ動きだしたのが、2年前でした。
しかし、期待とは裏腹に建築投資の動きは鈍く、さらに2年で多くの小さな建設会社が倒産しました。
札幌は今年に入って止まっていた大型案件が、いよいよ動き出すとの情報や、地場の建築物件も着工との情報を聞きますが、「一気に動きだして大丈夫なの? 人員(特に技術員)の確保ができるの?」と心配に成ります。
当社も、必要人員がまだ確保できていません。
担い手3法・4号特例の廃止で小規模な建物でも、図面提出の要求が増加します。「2025年の崖」を認識できないでいる方は、多いのではないでしょうか?
パソコンも、Windows10からWindows11に入れ替えが必要だし、BIM導入でPCの能力アップも必要。
それに対応するIT人材も必要に成ります。 先行投資で2025年問題への対応準備、完了しました。と言える企業は、まだまだ少ないのが現状だと思います。
BIM導入要求と作図技術者不足では、対応が遅れれば、まさに崖から突き落とされます。
当社も、昨年人員の増強を考え、作業オフィスの移転を行い、オフィスの広さを2倍にしました。また、PCもWindows11に切替えBIM対応の能力アップを実施しました。いわゆる先行投資です。そして理系の人材確保の為、求人活動に力を入れ、資金を投入しました。
しかしながら、理系の人材の確保、人員の増強は出来なく、特に理系の男性からの応募はゼロで、求人市場には理系男子はいない事を、思い知らされる大失敗をやってしまいました。
建設業の就業者数は、人手不足で減っているのだろうと思っていましたが、ある資料では逆に増えているとの事です。その理由としては、大手企業などが工業高校・高専学生との接点を増やして、一気に刈り取る採用活動をしているとの事ですし、転職市場でも人材は、地方の小規模会社から、都市部の大規模会社へ流れているとの事です。私たち中小企業では太刀打ちできません。
理系男子がすでに刈り取られたところに、幾ら求人広告を出しても理系男子からの応募は来ません。
それを知らずに、新卒求人ならマイナビに掲載させないとならないと思い、高額の掲載費を払い、その他の既存の求人媒体を使って、理系男子の中途採用広告を出したりしても、応募者はゼロで、求人広告費は全てドブに投げ捨てる大失敗をしてしまいます。 皆様は、技術員確保の為、理系男子を採用したいと思っても、「求人市場には理系男子はいない」と思って、そこに求人広告を出さない事が得策です。 では、どうしますか?
「女性や文系出身者に目を向けて、地域に根差しての生活を望む人材を求人する」と、頭を切替えましょう。
その中には物造りやCAD図面に興味を持っている方々もいます。理系と決めつけずに求人すると、意外と良い人材が来てくれます。 そして若い人材を確保して、その方々に現場の技術を教えて技術員を養成する事が、私たちの人材獲得の手段だと思います。 大企業と同じ土俵で求人して初任給を上げても、勝ち目は有りません。
私達のキーワードは、「人材を育てる求人」だと考えます。
次に、採用した人材の教育ですが、自社だけで出来ますか?
チョット想像してみましょう。これからは今まで使った事のないBIMを導入しなくてはなりません。
当然、社内には経験者はいません。経験者がいないので、それを教える事は出来ません。
古参の技術者は、古い技術は教えられますが、やったことのない新しい技術は、自ら受け入れる事も、
新入社員に教える事も出来ません。 これが、「2025年の崖」です。従業員高齢化の崖、段階の世代は間もなく引退します。突き落とされるか?踏みとどまれるか? 今、私たちはそこに立っています。
10年前に書いたメッセージ№4「餅は餅屋」で書いていますが、専門技術はその道の専門家に依頼しましょうですが、施工図を描く専門家はどこにいるのでしょうか?
一昨年、あるゼネコンさんが、「レブロでの施工図の描き方の講習をしてくれる会社を探したが、2社しか見つけられず、最初は大阪の大手研修会社に社員を送って研修させていたが、報告を受けてもさっぱり理解出来ないので、もう1社の北海道の御社に声を掛けさせて頂きました」と、部長さんが弊社に来られました。
この事例は、BIM_CADの操作方法を知りたいではなく、BIMで施工図を描く際に、「BIMをどのように構築するのか?」が、知りたいでした。
当社の講習を受けて「全く認識が違っていた」と、講習の感想を頂きました。
BIM_CADの操作方法は、CADメーカーの講習会などで学べますが、「これを現場でどうやって使う?」については、施工図を描いている現場の施工屋に聞いて見るべきです。
大阪の大手研修会社は、施工図屋ではなかったので、現場での使い方がわからなかった。
当社は施工図屋だったので、現場での使い方から、BIMをどう使うが理解できた。
そして「ゼネコンさんが、聞きに来た」で、わかるかと思いますが、ゼネコンさんも施工図屋ではないので、「これを現場でどうやって使う?」が、見えなかった訳です。
「2025年の崖」に向き合って考える事は、次の時代を作る新技術の導入と人材の確保と技術員の育成です。
専門技術を持った「餅屋」は現場にいます。まず、BIM経験がある施工図屋を見つけましょう。
BIMモデルはゼネコンさんが描いていますが、BIM施工図はゼネコンさんの作図範囲外です。
施工現場で使うのは、BIM施工図に成ります。施工図はゼネコンさんの下に入る専門業者が担当しいて、施工図を描くのはその下の施工図屋と呼ばれる技術員と成ります。ここまで下りて、やっと施工現場につながります。
そして施工図のノウハウはここに蓄積されています。
それと、BIM導入に当たり、よく勘違いされる事として以下の2点が有ります。
- CADをBIM_CADに入れ替えて、3Dで作図したらBIMに対応出来る。
- 既存の設備CADで3Dを描いていたのだから、既存の設備CADでもBIMに対応出来る。
この2点の考え方は、大間違いですから、もし古参の技術員がこのように主張しても従ってはいけません。
まずは「2025年の崖」に立っている事を認識して、「餅は餅屋」に依頼して、最初は1・2名でいいです。
社内にBIM対応の施工図作図技術者を育てましょう。 当社には、男性と女性の作図技術者がいました。
2人共現場経験のない素人でしたが、施工図屋として私が持つ現場技術を伝授してBIM施工図を描かせました。
しかし男性は途中で自己解釈に陥り、疑問を残したまま作図するようになり、その結果施工図が描けなくなり、今年初頭に退職しています。一方、女性の方は疑問を疑問として納得するまで調べ、わかるまで聞いて来ます。その結果、大手サブコンさんの技師より詳細で正確な施工図が描けるように成長しました。
そして退職した男性と入れ替わるように、CADを仕事にしたいと言う強い意志を持った女性が入社して、BIM施工図に取り組み、すでにお客様の図面の修正対応をこなしています。
人材育成では、男性が即戦力となるとは限りません。 求人や派遣で即戦力の人材が確保できるは、かつての事で、今は探してもいません。 「育てる求人」で人員確保をしていきましょう。
BIMの導入で新規技術の取込と同時に、技術員確保の問題を解決しなくてはならない2025年問題の取り組みを、当社の失敗を交えて紹介させて頂きました。
参考にして頂けたら幸いです。