No.4「餅は餅屋」
2015.09.28
「餅は餅屋」とは、何事においても、それぞれの専門家にまかせるのが一番良いということのたとえですが、いざ建物を建てたいと思ったときに「さて誰に依頼しようか?」とまずは考えます。 一般的な住宅なら、ハウスメーカーや建築工務店ですね。大きな建築物件なら、建築設計事務所に依頼して、設計してもらい、設計事務所の仲介で入札により、ゼネコン(建築会社)に建築工事を依頼しますね。 ここまでは、皆様がやっている通りの正しい選択です。
問題は、次の選択です。建築工事を進めるのに際して、自分には専門知識がないので、「すべてを丸投げして受注者に任せよう」とする方。自分には専門知識がないので、「施工管理の専門家を手元に置く、またはアドバイスを受けて、自分が発注した大事な建物が間違いなく作られることを監理しよう」とする方。どちらを選択するかで、明暗がはっきり分かれます。
前者の丸投げ
役所仕事に多いですね。前回の「知りたくはないと思いますが」で紹介した、新国立競技場のすでに使われてしまったお金を見ての通り、むしり取られるだけむしりとられ、建物はまだ建っていません。もし、自分が発注した建物だったらどうします。
後者の自ら監理
別名コンストラクションマネジメント方式といいます。完成してから、ここが違う、ここの機能がおかしい、「どうなっているんだ」とさわいでも、後の祭り的な不具合を劇的に減らせます。また、発注者が知る事が出来ない不具合を、見逃さずに是正できます。
さて、どちらを選択するかは、発注者様しだいですが、今回は一例として発注者が知る事が出来ない 不具合を紹介しますので是非参考にしてください。
工事の終盤に応援で、施工管理として着任しました。既にある施工図を見て「この形のダクトでは必要とする風量は出ないぞ」と気付き、なぜこんな絵を描いているのだと思い設計図を確認して見ましたが、設計図もそうなっています。
設計図が間違っていました。「管理」の担当者に聞くと、俺はこれではだめだと思いダクトを修正して「監理」に提出したが、「設計図通りにしろ」との指示で、施工図を描き直しさせられたとの事です。
不具合だと気付いていても「監理」は設計図通りの一点バリで、手が出せない。施工も既に終わっています。竣工前の検査で、風量測定をしましたが案の定、必要風量の半分も出ていません。風量測定の検査書は、既定の風量を満たしている数値に書き換えて提出されます。すでに建物は完成して、後数日で発注者に引渡しです。今更不具合を提示しても建物を壊さなくては直せない事実は闇に葬られます。
検査の評価点は80点越えの高得点で、発注者様も大満足です。ただ、この建物の重要箇所が換気量不足に陥っている事は、誰も知る由が無いだけです。発注者が、餅屋でない「監理」に権限を丸投げして、発生した一例です。日常茶飯の事です。