No.14「BIM最前線」
2026.07.13
BIMへ切替えないと、生産効率を上げる事が出来ない事は、大手ゼネコンさんは皆さん認識しています。
でも、何故、大手ゼネコンさんでも、BIM転換が進まなかったのか?
その理由を、札幌の現場が教えてくれました。
私がまだ若いころの30年前は、コンクリートを打設した翌日には、コンクリートを斫る「ダダダダ・・・」の音が現場に鳴り響いていました。いつもの光景です。
これは実際に作って見ないと間違いに気付けなかったから、発生していた損失です。このような損失を削減する為に、建設現場には少しずつ3Dが入って来て、3Dで確認しながら作図されるようになりました。
まず、動いたのは設備工事を行う設備・電気のサブコンと呼ばれる施工業者の方々です。そして使われたのがTfasと言うCADです。Tfasは、建築図・設備図・電気図を重ね合わせて見る事が出来て、且つ3Dを表示しながら、作図する事が出来た為、建築設備工事でのシェアは75%を占めて、Tfasを使えないと設備電気工事の図面が描けないと言われるくらい、重要なCadでした。私はここにBIMの原型はあったと思っています。
しかしながら、建築さんと呼ばれる建築工事の業者さんと、それを統括するゼネコンと呼ばれる建設会社ではTfasは使われる事はありませんでした。なぜなら建築図は2次元の平面図と2次元の断面図で表現されます。その上「作業員に渡す図面は紙に書いた2次元図だろう」と言う2次元図崇拝が有り、3D Cadの話を建築さんにすると、「ストレス以外の何ものでもない」とあからさまに拒絶されました。
この建築図の2次元図思考は、BIMにとっては、最大の敵で、この砦を如何に崩すかが、難問中の難問でした。 この為、ゼネコン本社でBIM推進部が作られ、図面の3D化、建築・設備・電気を統合した図面作成を推し進めようとしても、現場はこれまで通りの2次元図だけでいいのだと言う風潮で、現場では3D図や、それを統合して管理するBIM図面を受け入れる下地はありませんでした。
2023年に国土交通省が原則BIM化を打ち出して、作図管理のBIM化に取り組みましたが、前述の現場の技術者たちの2次元図思考に阻まれ、スタートはBIMと謳っても、「建築さんが使わないのなら、設備・電気も従来通りで行きます」となり、先祖返りでBIM化は失敗、現場は取り合いが取れず、逆にBIMはダメだと言う悪い事例となっていました。
そんな中で、1社のスーパーゼネコンさんが、「設計でBIMを導入して図面を現場に渡しても、それを現場が使う事が出来なければ、元のもくあみに戻る」と言う現状を打開する為には、現場にBIMを展開する為のBIMマネージャーを置かなくてはならないとして、対策を取りました。 それが、札幌の再開発ビルの現場です。そして、そこのBIM担当を引き受けたのが私達です。昨年6月、このチャレンジがスタートしました。
BIM の動向に詳しい方に聞くと、現在BIMを使い出しているのは東京から東で、西日本ではまだまだ動けていないと言っていました。そんな中で大阪の巨大プロジェクトでBIMを行っている現場があると聞きましたが、やはり苦戦されていているそうです。BIMを先行していた東日本での失敗が、西で再び起こっているようです。
この現象は、建築さんが2次元図しか使おうとしない事だけが原因でなく、BIMを図面の3D化と間違えて捉えている事も原因になっています。 いま私が担当する札幌の現場では、サブコンさん全社がBIM Cad のRebro で作図しています。着工当時にTfas を使うと言われていたサブコンさんも、今はRebro に切替えています。なぜなら、現場にBIMが入る事で、BIMの本当の利便性を認識する事が出来るようになったからです。今では、2次元図の回覧で図面を取りまとめようとすると、逆にサブコンさんから「他との取り合いが付けられないのでやめてくれ」と、言われるようになっています。
それでも建築さんはなかなかBIMに参加できなく、2次元図でこれまで通り対応していましたが、根気強く「建築の意匠・構造・躯体モデルが直ってくれないとBIMが成立しません」と訴え続けて、建築図の3D化が定着して、設計・監理・建築・設備・電気が「一つのBIMモデル」を見て、問題を共有して、不具合点の修正を行っています。そしてついに現場の建築担当者の口から「3D検討図、大変分かりやすいです」との言葉が出てきました。やっと来た。現場の建築さんがBIMを受け入れ始めた瞬間です。
ところで、BIMを取り入れる本当の目的を皆さんお分かりでしょうか?
図面を3Dで可視化して見る事でしょうか? 確かに3Dにする事で、2次元では見えなかったものが見えて来ます。しかしこれはBIMの本当の目的ではありません。3Dを見るだけなら3D Cad で事足ります。
BIMの本当の目的は、前述の、設計・監理・建築・設備・電気が「一つのBIMモデル」を見てです。
つまり「BIM=ワンモデル」、建築工事で発生する数千枚の図面を3D化して重ねて「図面を一本化して見る事」です。誰かが、どれかの図面を触って変更したら、一本化されたBIM図面が変更され、工事に関わる全ての人が、その変更を知ることが出来て、「知らなかった」によるミスを無くする事がBIM本来の目的です。
そして、それが出来るCad は、日本で生まれた図面を重ね合わせて見るノウハウを持ったBIM Cad のRebro です。国外のBIM Cad は、これが分かっていません。だから、BIMを推進するゼネコンさんはBIM CadのRebro を使って図面の1本化に取り組んでいます。しかし、Rebro では、建築の複雑なモデルは描けません。この為、建築が他のBIM Cad で描いたものを、Rebroに取込んで図面を1本化しなくてはなりません。
現在はまだ、BIMに関わる全員が一種類のCad で一本の図面を操作するところまでは行っていません。
この為、複数のCadの図面を統合して、図面を一本化し、管理する者が現場にいなくてはなりません。
それが、現場対応のBIMマネージャーです。BIMはCadを替えれば出来ると言うものではありません。
複数の図面を統合して、図面を1本化し、管理するノウハウを持った、BIMマネージャーが必要です。
これまで、BIMにチャレンジしても、途中で先祖帰りした現場では、「統括するゼネコンがBIMマネージャーを置いて管理する事をしていなかった」と、「統括するゼネコンがBIM化に対して強力なトップダウンをしなかった」事だと私は思います。いま私が担当する札幌の現場では、この2つをする事で、BIMの現場展開が出来ました。そしてこの現場のゼネコンさんも、現場にまでBIMを展開する事ができたのは初めてと言っています。
この現場に携わるサブコンさんも、ここでBIMのノウハウを手にしています。
この現場が起点になり、BIMの展開が広がり始めます。一度BIMの利便性を知った人達は、従来のCadに戻る、先祖がえりはあり得ません。
BIMが施工現場を変えます。膨れ上がる建設コストを抑える為にも、BIMを正しく理解してBIMの導入を進めて頂ければと思います。
以上、BIM最前線からの報告と致します。