有限会社サンエナジー

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「建築設備工事、施工管理のミニ知識」

前回の投稿で建築現場へのBIMの導入の動きを取り上げてから2年が過ぎて、今はどうなったでしょうか?
また、現場の技術屋はどうなったでしょうか? 今回は「BIM導入で変わる施工図屋の立ち位置」と題して、現場の施工図屋の目線で、施工図面の作図がどうなって来たかをまとめてみました。

No.12「BIM導入で変わる施工図屋の立ち位置」 

2023.02.27

新型コロナが発生してから2年が過ぎて、止まっていた流れが少しずつ動きだし、いよいよ新規の物件工事が始まる時が来ましたが、この2年間で施工図屋ずいぶん減ったように思えます。

2年前、BIM化の流れで、いっきにCADが代わるかと身構えましたが、やはりBIM対応のCADに切替えたくても、現場の技術者は既存のCADしか使えないので、スタートはBIMで、との号令が出ても、やっぱ既存CADでと、納まってしまったのがこの2年だったようです。このまま既存のCADでいけるかと思われる方が多いかと思いますが、実態は違います。この2年間に着実にBIMへの流れが進み、大手の建設設備会社では、BIM対応CADへの転換宣言が次々にだされています。この流れ、止まらないと思って対応した方が良さそうです。では、「BIM導入で何が起きているの?」を、見てみましょう。

設計の現場にBIMが入り、設計図が3Dモデルで作成されます。先日貰った設計図も設備が3Dで描かれていて、「もう施工図、出来上がっているの?施工図描いてと依頼されたけど、俺たちに何をしろと言うの?」と、図面を眺めながら、考えこんでしまいましたが、「どうなっているの」の思いを持ちながら、図面を見ていましたら「あれ、何か違わない。これでは施工出来ないぞ!」が、いたるところに出て来ました。
なるほど!ピント来ました。
「この図面、現場施工の経験の無い人が描いた設計図で、施工図ではないのだ、だから我々施工図屋に施工図を描いてとの依頼になっているのだ」と、依頼内容を納得致しました。

施工図は実際に工事を施工する為の図面です。施工する為の図面ですから施工できない図面は施工図とは言いません。よく勘違いされるのが設計図と施工図です。設計図だけでは施工は出来ません。
そもそも最初から描く目的が違います。設計図は、建築基準法に従って、そこに必要なものを描き込んでいきます。その場所に配管やダクトが納まっているかは二の次です。だから、これまでは設計図は2次元CADで、間に合っていました。
そこにBIM導入で、3次元CADで設備の納まりも考慮した設計が始まり。「これから3Dで行きます」と、いきなり言われても、そうそう3DCADを操作できる技術者なんていないですから、まあ何とか3Dで図面が描ける図面屋を探してCADオペさんと呼ばれる人に描いてもらいます。
CADオペさんは当然、現場の仕事経験などありませんし、現場に入った事もありません。
だから、現場の者が見ると「なんじゃ、これは」となる、施工出来ない図面が来るわけです。
結果、施工現場では本当に施工できる図面に描き直す為の施工図屋が、BIMが導入されても必要になります。

しかしながら新型コロナが発生して次々に計画されていた工事がストップ。施工図屋も仕事が無くなり廃業されたり、企業が手放したりで、この2年間にずいぶん減っていると思われます。一度手放した施工図屋を呼び戻そうとしても、簡単には集めることは出来ません。
もともと、施工図技術者の高齢化が問題になっていましたので、この2年間のダメージは大きかったでしょう。
実際、最近の現場では、人は大勢いますが、図面を描ける人がいなくなっています。
施工図屋を雇いたくても、本社から「これだけ人を入れているのに何故施工図屋が必要なのだ」と、理解して貰えません。現場が、本当に施工できる図面に描き直す施工図屋を確保出来ないままで工事がスタートしたら、工事は不具合だらけの後戻り工事で大赤字。出来上がった建物は、大きな声では言えない欠陥だらけになります。BIMモデルで、設計の段階で早期に不具合を見つけて改善し、より良い建物を造ろう、として始まったBIMで、作図技術者不足の実態があぶり出されて来ました。

施工の不具合は、決して設計や監理だけが悪いわけではありません。ましてや、工事施工会社が起こしている訳でもありません。ただ、設計の現場と施工現場の施工図屋とが、繋がりが無いが為に、代用で施工現場を知らない図面屋を使わざるを得なかった事が、不具合に気づかない状況を作り続けているのだと思います。
BIMのモデリングは、作図技術者の配置についても、解決しなくてはならない問題を見せてくれています。
私はBIMが導入され、その本来の機能を役立たせる為には、作図する技術屋の配置も変えなくてはならないと思っています。

一般の方でもわかるように、図面と図面を描く人に付いて簡単に説明しますと、

  1. 設計者が描く図面は、建築基準法に従って、ここにはこれが必要ですと描いた図面です。
  2. 図面屋さんとは、設計者の図面を設計者に代わって作図するCADオペさんの事で、現場を知らない人です。
  3. 施工図屋とは施工管理技術者で、現場での施工経験を有して、施工を行う為の図面を描く人です。

1の設計者と2の図面屋さんは、現場から離れた机の上でモノを考えていますので、現場の仕事や現場の細部は、わかりません。モノを最終的に形につくりあげるのは施工現場です。そこで施工現場を知り尽くしていて、図面も描ける人が必要になります。それが3の施工図屋になります。
図面屋と施工図屋。呼び方は似ていますが、全くの別者です。3の施工図屋になれる人材を育成するのは、「たいへんそうだし、時間もかかるよな」が、ご理解いただけると思います。

施工図屋について、もう少し説明しますと、求人広告で「施工管理技術者います。即戦力になります。」と、見かけますが、施工管理技術者=施工図屋ではありませんからご注意ください。
施工図屋とは、施工図面が描ける施工管理技術者ですので、お間違いなく。
ほんの一握りしかいない人達です。
だから前述しました「これだけ人を入れているのに何故施工図屋が必要なのだ」の、理解不足が生まれます。

2年前、ネット上には「施工図請負います」の広告いっぱいありました。しかし、今は見かけません。
2年前は「図面屋も施工図屋も一緒」と、考えられていたと思います。だから、図面屋が「施工図請負います」と広告出していたのでしょうけど、描かせてみたけど現場では使えない。その間、現場の人材育成が止まり、2年前より、技術者不足は深刻です。更にBIMに対応出来るCADを使える人材となると益々いません。
私は北海道にいますが、最近、関東圏でも施工図屋を探せないとの話を耳にします。
建築でのBIM導入が進み、CADはどんどん進化していますが、人がいないと、その技術は使えません。

この2年を見て、私からの提案ですが、BIM導入は時代の流れで止まりません。今更2次元の図面に戻る事はありません。作図方法が変わって来たなら、人材の配置も変えなくてはなりません。
設計の現場に、施工図屋を引っ張りだしてください。
お施主さんに一言お伝えします。「あなたの大切な建物の良し悪しは、早い段階で施工図屋を確保出来るか」に、なります。「設計の段階から施工図屋を配置する」を、契約条件に入れてください。
図面屋に描かせて、それを施工図屋に直させるでは、作図コストが2倍以上に膨らんでしまいます。

最後に、図面屋と施工図屋を見分けるコツをお話します。
施工図屋は、打合せに作業服を着てきます。なぜなら彼らはモノ造りの職人ですから、作業服が制服になっています。皆が皆、そうだとは言えませんが、参考にしてください。